なぜ魚は海水という塩水に浸かっているのに、身が塩味にならないのだろうか?

霊夢
今日のお刺身美味しいねー。
魔理沙
まったくだ。
こんなウマいアジは久しぶりだなぁ。
霊夢
あー魔理沙、お醤油取って…ん?
あれれ?
魔理沙
どうしたんだ?
霊夢
醤油でハッとなったけど、アジって海にいる魚じゃん?
なんで刺身がしょっぱくないの?
魔理沙
知らないのか?
それは浸透圧が関係してるんだぜ。
霊夢
しんとーあつ?
何それ
魔理沙
それも分からないか。なら今回は、なぜ魚は海水という塩水に浸かっているのに、身が塩味にならないのかの謎について解説しよう

まずは海水魚について

魔理沙
てなわけで始めるが、まずは海水に住む魚…つまり海水魚について説明しよう。
霊夢
ずいぶん広い範囲だけど大丈夫?
魔理沙
大丈夫だよ。
メインじゃないから、ここはざっくり行くし。
で海水魚なんだが、とどのつまりは海で生活する魚類の総称だ。
霊夢
さすがにそのくらいの知識は、ね。
魔理沙
すべての魚類の5割以上である、約16,000種が存在しているぜ。
そんで、世界中で水産資源として重宝され、世界すべての漁業で得た資源の2/3が海水魚とされている。
霊夢
想像はつくけど、改めて聞くとほんとすごい規模だよ。
魔理沙
特に日本は島国ということもあり、海水魚は国内において極めて重要な資源と言えるだろう。
実際国内の魚類総生産量の、90%以上が海水魚という統計があるみたいだしな。
霊夢
90%!?
淡水魚はあんまり獲ってない感じなんだね。
魔理沙
人気の具合は分からないが、我が国においては圧倒的に海水魚の方が需要で言えば多いな。
で、そんな海水魚に対する疑問が今回現れたんだが…
霊夢
そうだよ!
あらゆる海で育ったたくさんの魚は、どれひとつも塩気がないんだって!
こんなのおかしいじゃない!
海っていう天然の味付けがあるのにさ
魔理沙
海水を味と認定するんじゃない。

どうして海水にいる魚を食べてもしょっぱくないのか?その理由を知るためには「浸透圧」を理解

魔理沙
てなわけで今から、どうして海水にいる魚を食べてもしょっぱくないのかを説明したいんだが…
その理由を知るためには「浸透圧」を理解しなければ話にならないんだぜ?
霊夢
うんうん、さっき言ってたね。
ほんで一体浸透圧って何なの?
魔理沙
浸透圧とは生物の細胞で起こる現象で、濃度の違う液体が隣接した際に、濃度を一定に保とうとする力を言うんだよ。
霊夢
……へ?
よく分かんないんだけど。
一言で私に理解させられないなんて、魔理沙もおちぶれたもんだよ。
魔理沙
なんで上から目線なんだよ。
例えるなら、薄い水と濃い水を隣り合わせにすると、薄い水が濃い水の方へ行って濃度を下げて、薄めようとするのさ。
まあこれは浸透圧とは言わず、正確には浸透圧差が生じたと言うんだがな。
霊夢
なんで上から目線なんだよ。
例えるなら、薄い水と濃い水を隣り合わせにすると、薄い水が濃い水の方へ行って濃度を下げて、薄めようとするのさ。
まあこれは浸透圧とは言わず、正確には浸透圧差が生じたと言うんだがな。
魔理沙
液体って言ってんだろ!
で、最終的に双方の濃度は似たような感じになるってわけだ
霊夢
ふむふむ。
でもさ、細胞で起こるっていうけどめちゃ小さいし、ひとつひとつの細胞は壁があるよね?
どうして液体が通り抜けるの?
魔理沙
それは「半透膜」の性質を持つからだよ。
水分やアミノ酸などの低分子物質はすり抜けられるんだが、たんぱく質などの高分子物質はすり抜けられないのさ
霊夢
てーぶんし?
こーぶんし?
魔理沙
数個〜百個程度の原子から出来ているものを低分子、数千個以上なら高分子となるんだ。
霊夢
なるほどね!
半透膜ってヤツなら、ある程度はすり抜けられるんだ!
そんで魔理沙の言い方だと、濃さを一定にするって言っても、それは低分子のものだけってことだね。
魔理沙
そういうことだな。

海水の塩分についての知識

魔理沙
そんで話は戻るが、海水って飲めるか?
霊夢
飲めるわけないじゃん。
塩辛過ぎて吐いちゃうよ。
魔理沙
じゃあそんな海水が、人の身体に入ったらどうなると思う?
ちなみに海水の塩分濃度は3.5%程度で、人間は1%程度だ
霊夢
えっと…海水が3.5%で人間が1%なら、海水はめちゃ濃いわけだよね。
そんで、薄い方が濃い方に行くんだから…
魔理沙
……
霊夢
身体の水分が、濃い海水を薄めようとしちゃうから…あああ!?
海水浴のあと、喉が乾くのはそれかぁぁぁ!
魔理沙
ふふふ、気付いてくれたようで何よりだ。
細胞や血液中の水分が、濃い側に移動してしまうことで、移動元の水分が足りなくなるんだよ。
なお他にも、海上で漂流した場合に海水を飲むなってのは、そういう意味だからだぜ?
霊夢
そういや、海水をたくさん飲むと脱水症状になるって言うね。
めっちゃ水分摂ってるはずなのに、何言ってんのかなって思ってたよ。
魔理沙
何も分からなかったらそう思うだろうな。
でも先のとおりの理由、根拠があるのさ。
霊夢
なんかめっちゃ勉強になった…けど、魚と何の関係があるの?
塩水が低分子物質はなのは勉強になったけど

なら、なぜ海水をガブ飲みしても魚は塩味にならないのか?

魔理沙
さて、ここからが今回のメインになるぞ。
実は魚も人間と同じで、海水が多量に身体を巡ってしまうと害があって、そこは同じなんだ
霊夢
え!?
でも平気でスイスイ泳いでるじゃん!
まさかあの状態で、一滴も海水飲んでないの?
魔理沙
いや?
それはもうガブガブ飲み倒してるぜ。
しかし魚の場合は、多量の塩水が体内に入ってもそれを排出するシステムが構築されているんだよ
霊夢
でも、海水の塩分って相当なものじゃない。
多少外に出したところで、まるで追いつかないんじゃない?
魔理沙
そんな霊夢に質問だ。
まず人間は、どうやって余分な塩分を排出するんだ?
霊夢
えっと、おしっこと汗じゃないの?
魔理沙
まあそんなところだろう。
だが魚の場合は汗腺がないから、汗で塩分を排出することは出来ないな。
霊夢
じゃあ人間より不利じゃん!
塩水が巡りまくって身体から全部水分抜けて、セルフ干物になっちゃうよ!
魔理沙
自ら干物にはならねえよ。
実は魚ってのは、尿の他にエラでも余分な塩分の排出を行っているんだぜ。
霊夢
いやいや!
排出する部分にエラが増えただけじゃない。
しかも汗じゃ出ないんだから、状況は人間とそれほど変わらないよね?
それだけで陸上に住む人間と、ずっと海にいて年がら年中塩水まみれの魚との差を埋めるのは不可能だって。
魔理沙
ところが可能なんだな。
理由は魚のエラにある「塩類細胞」というヤツで、これにより人間が排出するような塩分濃度の薄いものじゃなく、より濃厚にして排出することが出来るのさ。
霊夢
ふぉぉぉぉ、便利なもの持ってるなぁ!
そっか、排出能力が違うんだね。
魔理沙
ああ。
もちろん汗なんか比較にならないほど、塩分の排出能力は優れている…てか、圧倒的だな
霊夢
ふむふむ。
人間じゃ耐えられない塩分の量でも、魚なら塩類細胞によって排出のシステムが強力な分耐えられるんだ
魔理沙
正解だ!
だから海水に暮していても、海水をガブ飲みしても魚は大丈夫なんだよ。
霊夢
話を聞いてるとそうみたいだね。
ちなみにそのシステムは、魚の身には一切の影響を与えないの?
魔理沙
常に魚は体内塩分量が一定であることから、まったく影響を受けていないと考えていいな。
つまり一切身には塩分が侵入していないってわけで、それにより刺身にしても塩辛くないわけだ
霊夢
納得した!
いやー、ほんと上手くできてるんだねぇ。
でもさ、あの環境なのに「まったく塩味がない」ってのもおかしな話だよ
魔理沙
もちろん魚自身が死んでしまったら、あらゆるシステムは機能停止するため、速やかに全身塩辛くなるだろうな。
切り身の魚を塩水に通せば、普通に塩味になるのは言うまでもないだろう。
霊夢
あ、生きていないと排出しないんだ。
そりゃそうか…死んでもシステムが生きてるんじゃ、調理なんてできないもんね。
魔理沙
だな。

実は地球上にいる生物の体内塩分量は大差がない!

魔理沙
あと、実は地球上にいる生物の体内塩分量ってのは、みんな大差がないんだぜ?
だから塩味がなくても仕方ないし、それは普通のことなんだよ
霊夢
ええええええ!?
そうなの!?
魔理沙
人間も魚も、体内の塩分濃度はさっきも言ったがおおよそ1%なんだ。
その1%を保つために、浸透圧という現象を上手に利用しているのさ
霊夢
ち、ちょっと待ってよ!
百歩譲って、人間と海水に住む魚の塩分濃度が近いのはいいよ。
でも、淡水魚はどう考えても1%もないでしょ!
魔理沙
ふふふ、あるんだなそれが。
淡水魚も、他の生き物の例に漏れず、体内の塩分濃度はおおよそ1%程度なんだよ。
霊夢
物理的にも理論的にも無理じゃん。
だって、住むところは淡水なんだし、塩がないんだからさ。
魔理沙
少し勘違いしているようだが、淡水はごく微量ではあるものの一応塩分が含まれているぜ。
そして、その魚自身が持っている塩分もあるじゃないか。
生物は一定の塩分がなければ生きていけないからな。
霊夢
だからそれは、浸透圧で薄くなっちゃうんでしょ?
淡水は塩分がほとんどないんだから、魚が持ってる塩分なんてすぐなくなるじゃない。
魔理沙
ところがどっこい、そこも上手く排出しているんだよな。
霊夢
は?
どういうことなの?
魔理沙
ちと脱線してるが、海水に住む魚が塩辛くならないのであれば、淡水魚はどうなんだという疑問は当たり前だからあえて説明するよ。
霊夢
分かりやすくね!
魔理沙
分かってるさ。

海水に住む魚が塩辛くならないのであれば、淡水魚はどうなんだろう?

魔理沙
まあ簡単にしておくが、淡水魚の場合は自身が塩分を持っているが、周囲は塩分がない。
つまりは、海水魚の逆パターンとなるわけだよな?
霊夢
うん、そのとおりだね。
魔理沙
だから、もし何も排出システムが機能しなければ、淡水魚は何もしなくても周囲の水分がどんどん身体の中に入ってくることになる。
霊夢
そうそう!
浸透圧の話をした後だから、よけいそこはおかしく感じるんだよ。
魔理沙
だが勝手に体内に水が入ってくるものの、やがて尿として排出されてしまうんだ。
霊夢
ええ!?
尿って…海水魚もそれやってたじゃん!
同じことやってんの?
魔理沙
そう、同じようなことをしているな。
だが海水魚がエラをシステムの要にしているのに対して、淡水魚は尿を要としているんだよ。
霊夢
そ、そうだったんだ…
ちなみにどんな感じで排出してるの?
なんか特殊な尿をするとか、なんかを混ぜて排出するとかさ。
魔理沙
入ってきた淡水を、尿としてひたすらどばどば出すだけ。
霊夢
…そんだけ?
魔理沙
そんだけ。
霊夢
もっと、なんか変化球あるかと思ったよ!
魔理沙
わざわざシステムを複雑にしてどーすんだよ。
生きていくためのものなんだから、出来るだけ簡素にしなきゃ大変だろ。
霊夢
そりゃそーだけどさぁ…
あ!
じゃあさ、鮭はどーなるのさ!
海も川もイケる水陸両用車じゃん!
魔理沙
海も川も陸の要素はねえよ。
そこについてだが、まず海水魚はエラをメインに塩分を排出するシステムを持ち、淡水魚は尿…つまり腎臓を使って水分を排出するシステムを持っているまでは分かったよな?
霊夢
お、まとめに入ってきたね。
うんうん、そこについてはこれまでの話のとおりだわ。
魔理沙
で、鮭は塩分濃度の高い海水でも、塩分のほぼない淡水でも生きられる。
この時点でおのずと答えが出ると思うんだが?
霊夢
……まさか、両方のシステムを兼ね備えているとか?
魔理沙
分かってるじゃないか。
正解だ。
海水と淡水を行き来出来る魚っていうのは、どちらでも生きていけるように身体が作られてるのさ。
霊夢
便利だねぇ…行き来するのは大変だろうけど。
なるほどなるほど。
魚ってそういう機能があって、上手く今いる環境に適応しているってことかぁ
魔理沙
そういうことだ。
とまあ、これで今回の解説は終わりになるぜ。
霊夢
よーく分かったよ!
ああ、あと最後の質問だけど、海水魚を淡水に放すとやっぱり死んじゃうの?
魔理沙
数分程度は大丈夫だが、それ以上は上手く塩分を調節出来なくなって死に至るだろう。
霊夢
やっぱそっか。
じゃあ淡水魚も海水に放したら、似たような感じで死んじゃうのね。
魔理沙
だな。

海水魚も淡水魚も同じ水の中で共存させることが可能に!?

魔理沙
なお余談になるが、実は現在海水魚も淡水魚も同じ水の中で共存させることが可能となったみたいだぜ。
霊夢
最後の最後で惑わせないで!?
前提が狂ってくるじゃん!
魔理沙
そこは大丈夫だ。
とある大学において、「好適環境水」というものが開発されたようで、その中では海水魚も淡水魚も問題なく過ごせるとのことなんだよ。
霊夢
また、とんでもないもの開発しちゃったね…
どういう仕組みなの?
魔理沙
まず海水ってのは塩だけじゃなくて、この世にある元素のほとんどが溶け込んでいると言われているんだ。
その中で、魚の浸透圧に関連する元素やその濃度を突き止めたことで、完成に至ったのさ。
霊夢
へー!
なんか不思議だね。
でもさ、おかしな魚にならないのかな…
魔理沙
何言ってんだ。
山間部で実際に養殖で運用されてるんだぞ?
霊夢
な、なんだってーーー!?
味とかいろいろ大丈夫なの?
魔理沙
海水のものと変わらないそうだ。
でも、まだまだ始まったばかりで歴史が浅いから、今後なんらかの形で進化するかもしれないな。
霊夢
進化ね!
なるほど…海水魚と淡水魚の良さを兼ね備えた水陸両用車に加えて、新たにハイブリッドなところを持った水陸空両用車…
魔理沙
だから水しかねえって言ってんだろ!
霊夢
ということで今回はなぜ魚は海水という塩水に浸かっているのに、身が塩味にならないのだろうか?について紹介しました。
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