ウナギはどうして生態が不明なのか?

霊夢
うわ!
このうなぎ美味しいねー!
魔理沙
ほんとだな!
焼き方もあるけど、この脂の乗りが最高だ。
さすが天然モノは違うぜ。
霊夢
天然かぁ…何処で獲れたやつなの?
魔理沙
ん?国産だけど…
霊夢
国産ね!
どんな感じで育ったのかな?
魔理沙
知らん
霊夢
知らんって何さ…
魔理沙
知らんものは知らんよ。
うなぎの生態ってのは、分厚いベールに包まれているんだ。
霊夢
なんでそんなに不明なところが多いの?
魔理沙
じゃあ今回は、ウナギはどうして生態が不明なのか、その辺りについて触れていくぜ。

うなぎという魚の基本情報と特徴

霊夢
てかさ、不明っていうけど、うなぎって魚だよね?
他の魚と、結局は同じでしょ?
魔理沙
ところが、はっきり言って他の魚とはまったく違うところが多いんだ。
てなことでそれについて解説するんだが、その前にうなぎという魚の基本情報やその特徴から話そう。
霊夢
りょーかい!
でもうなぎなんて、てりゅんてりゅんな魚で長いってくらいの特徴じゃない?
魔理沙
てりゅんてりゅんって何だよ。
言わんとしていることは分かるが、そんな副詞初めて聞いたわ。
うなぎってのはウナギ科ウナギ属の魚類で、世界中に19種類存在しているぞ。
霊夢
そんなに種類があったんだ!
どれが一番美味しいのかなぁ?
でも日本人なら、やっぱりニホンウナギ…
魔理沙
いや、食用となるのはその内4種類だけなんだよ。
今霊夢が言ったニホンウナギは、そのひとつだな。
霊夢
あらら…食べるってなると、そんなに居ないんだ。
そういやデンキウナギも居るし、食べちゃったらバババババ!って骨が見えちゃうね。
魔理沙
昔の漫画じゃねえよ。
それに、デンキウナギはウナギ科の魚じゃないんだぜ?
霊夢
なんかややこしいね…うなぎの世界も。
魔理沙
だな。
だからニホンウナギに焦点を当てて説明するが、もはや日本においてその知名度は推して知るべしだ。
抜群の栄養価、蒲焼と言えば真っ先にうなぎが出るほど馴染み深い。
霊夢
そうそう。
日本なら、マグロと同じくらい知名度あるレベルだから、一番有名って言っても大袈裟じゃないよ!
魔理沙
そう言っても違和感がないほどの歴史もあるしな。

日本ではいつ頃から食べられるようになった?

霊夢
ああ、そう言えば日本じゃいつ頃から食べられるようになったの?
魔理沙
「食べられた」ってだけなら、縄文時代にはすでにうなぎを食べた痕跡があるんだぜ?
霊夢
桁外れに昔だった。
そりゃ馴染み深いよ。
馴染みっていうか、もはや遺伝だよ。
魔理沙
なお、うなぎが本格的に食べ物として定着したのは、江戸時代初期あたりとされているな
霊夢
へー!
昔の人も蒲焼食べてたんだ!
魔理沙
今で言う蒲焼なんてものは、もっと後になってからだぞ。
当初はうなぎをぶつ切りにして、串に刺して焼いただけだったんだよ。
霊夢
わ、ワイルドだね…
骨の処理が大変そう。
そんなうなぎで値段がバカ高いとか、ちょっと割に合わないような気がする。
魔理沙
それが蒲の穂に似てるから、蒲焼と呼ばれるようになったって話だぜ?
ちなみに、バカ高いだなんてとんでもない。
ソバと値段は大差なかったようだ。
霊夢
激安!?
一般大衆魚レベルじゃん!
魔理沙
まあ、そんなこんなで日本人に馴染み深いうなぎだが、その生態については驚くほど知られていない。
というか、分からないんだよ。

うなぎの現在主流の養殖の仕方

霊夢
なんで!?
養殖してるんでしょ!
魔理沙
養殖とは言うが、現在主流の養殖の全貌を理解しているか?
霊夢
全貌?
うなぎ育てて卵産ませて、孵化させて育てて…の繰り返しじゃないの?
魔理沙
違うんだ。
現在主流の養殖ってのは、シラスウナギと呼ばれるうなぎの仔魚を捕獲して育てるという、言わば蓄養という形態なんだよ。
霊夢
は?
なんでそんなめんどくさいことするの?
魔理沙
なんでって、人工孵化が出来ないからだ。
まあ人工孵化については後述するけど、現在主流の養殖においては人工孵化が出来ず、シラスウナギ漁に頼っている状態なのさ。
霊夢
そうだったんだ…
まあ、めんどくさいけど子どもを捕まえればいいんだから、それはそれでいっか。
産卵場所辺りで、シラスウナギが生まれるのを待っていればいいんだし。
魔理沙
産卵場所ねぇ…それもずっと謎だったんだよな。
霊夢
えええええ!?
なんでそんなに分からないところが多いの?
…あ、でも「謎だった」ってことは…

産卵場所が特定された

魔理沙
ああ。
ようやく現代になって、その産卵場所が特定されたんだ。
霊夢
おー!
ついに解明だわ!
でも現代っていつくらい?
現代なんだから、1900年代なのは間違いないよね。
魔理沙
2009年。
霊夢
10年くらいしか経ってないよ!?
そんな最近だったの!?
ていうか、一体どこなのさ!
魔理沙
日本から2000km以上離れた、太平洋のマリアナ海域だそうだ。
日本の研究チームが、2006年頃から本腰を入れて調査を始めて、ようやく特定したんだぜ?
霊夢
えっと…ちょっと待って?
なんでわざわざ2000km以上もかけて、遠路はるばる日本にやってくるの…?
魔理沙
分からん。
霊夢
なんだそれ!
魔理沙
分かっているのは、マリアナ海域で孵化したあと太平洋を回遊し、東アジアに向かうってくらいだ。
日本はうなぎの回遊先のひとつで、やって来てから川を遡上するんだよ。
そして川で5〜10年過ごして、また海へ戻り太平洋を回遊してマリアナ海域へ向かい、産卵するって流れなんだぜ。
霊夢
ま、まあ回遊先に関してはどの魚でも同じことが言えるから置いといて、なんで大海原に居たのにわざわざ狭い川で暮らすの?
サケとかマスとまったく逆じゃない!
魔理沙
分からん。
霊夢
またそれ!?
分かった感じ出してんのに、肝心なところ分かってないじゃん!
魔理沙
仕方ないだろ。
ああ、そういえばさっき、川を下ったらまた海に戻ってマリアナ海域に行って産卵と言ったけど、この辺りはあくまで流れ的にその可能性が高いってだけで何の確証もない。
霊夢
またか!
てか、ほとんど何も分かってないじゃない!
魔理沙
分かっていることはあるぞ?
うなぎの卵とか仔魚については、ある程度把握されている。

うなぎの卵や仔魚について

霊夢
あ、そうなんだ。
どんな卵でどんな子どもなの?
魔理沙
まずは卵だが、大きさは直径1.6mm程度。
産卵から、たった数時間で孵化が始まるそうだ。
霊夢
みじか!
そんな短時間で大丈夫なの!?
おっと、まだ半ナマだわサーセンwみたいな感じにならない?
魔理沙
近頃のうなぎは性格が軽いな。
まあ実際産まれてくるんだから、特に問題はないんだろう。
そんで卵から孵ったうなぎは、「レプトセファルス」という透明な幼生となるのさ。
霊夢
あらやだ、妖精なんて。
私みたいだわ。
魔理沙
ああ、そうだな。
陽性だな。
馬鹿さ加減が。
霊夢
イラッ。
魔理沙
なお大きさは1〜6cm程度で、一見柳の葉のように見えるんだ。
自力で泳げないため、しばらくは海の中を漂うように育つと言われている。
霊夢
うわ…その頃ってめちゃ小さいんでしょ?
他の魚に食べられる恐れがあるんじゃない?
魔理沙
それはどんな魚でも同じだぜ。
孵化後から幼魚の間ってのは、魚の一生で一番危険な時期なのさ。
だからこそ、食べられる可能性の高い魚は大量に卵を産むし、そうでない魚はそれほど産まないという差が出来るんだよ。
霊夢
ふむふむ。
自然の摂理ってやつだね。
魔理沙
そのとおり。
なお、海の中を漂ってある程度成長すると自力で泳げるようになるんだが、その時期からシラスウナギと呼ばれるようになるんだ。
で、回遊が始まるって流れなんだが、川を遡上出来る段階になると新月の日の夜に、深い場所から浅い場所にまで浮上すると考えられている。
霊夢
おお!
そこからが、ようやく捕獲の対象になるってわけね。
でもさ、なんで新月の日なのかな?
魔理沙
なんか神秘的だろ?
理由は天敵に狙われないためと言われているが、それなら新月じゃなくてもいいんじゃね?的な疑問がある。
つまり分からん。
霊夢
がーーーーー!!
さっきから何なの!?
分からん分からんって!
わか蘭か!!
魔理沙
だから生態が不明って言ってるじゃないか。
あと花かっぱじゃねえよ。
というより、今回のテーマが「なんで不明やねん」だし。
霊夢
(なんで関西弁になったんだろ…)

捕獲量が減少…

魔理沙
そんで話を戻すが、うなぎの養殖はシラスウナギを捕獲するって言ったよな?
霊夢
あ、ああ、うん。
魔理沙
実はこのシラスウナギ、1970年代から捕獲量が減少を続けていて、はっきり言ってピンチなんだよ。
霊夢
どのくらいピンチなの?
魔理沙
スーパーで、大福と一緒にお前を並べるくらいピンチ。
霊夢
詰みじゃん!
「このモチよく伸びるけど、噛み切れなーい」ってなるわ!
てか、どうしてなの?
やっぱ獲りまくりだから?
魔理沙
まあ、それしか理由はないだろうな。
最も獲れていた時で200トン超えだったようだが、2013年には5トン少々しか獲れてないんだよ。
霊夢
…え?
そんなに獲れなくなっちゃったの?
ヤバ過ぎない?
魔理沙
ヤバ過ぎだよ。
おかげさまで2013年には環境省レッドリスト入り、2014年にはICUNレッドリストに絶滅危惧種登録となった。
霊夢
も、もうダメだーーー!
これからうなぎは食べられなくなるんだ!
蒲焼の代わりにカバ焼きになるんだぁぁ!
魔理沙
カバは日本じゃ特定動物に指定されてるから、ペットとしても飼育不可だぞ。
で、まだ話は終わってない。

うなぎの完全養殖が成功

霊夢
ん?
もうダメなんでしょ?
魔理沙
さっき養殖の話をしたじゃないか。
霊夢
養殖って…シラスウナギの捕獲量が減ってるって話なのに、その後の話してどーすんのさ。
魔理沙
単刀直入に言おう。
日本の水産総合研究センターにおいて、うなぎの完全養殖が成功しているんだ。
霊夢
なんだってええええええ!?
養殖って、シラスウナギ捕まえなきゃ無理って言ったじゃん!
魔理沙
言ってない。
シラスウナギ漁を経て養殖するのが「主流」と言っただけだ。
霊夢
主流ってことは、主流じゃない別のやり方もあるってことだから…
え!?
それが完全養殖ってこと!?
魔理沙
まあ、主流じゃないとしても、完全養殖に成功したのは水産総合研究センターだけなんだから、言葉遊びになっているところはある。
しかし、2019年には人工で育成したシラスウナギを、民間養殖業者に委託した後成魚にした実例があることから、今後はそちらが主流になっていくはずだ。
霊夢
うひょーーーーーー!
日本頑張ったぁぁぁぁぁ!
魔理沙
ただし、まだ課題も多い。
飼育環境やエサ、その他設備のコストがかさむため、採算が取れず流通には今しばらくの時間が掛かるだろう。
さらに完全養殖のうなぎにはメスが生まれず、サイクルを構築できないという致命的な問題点も解決されていない。
霊夢
むむむ…まだまだ問題は山積みか…
もちろん、なんでメスが生まれないのかも分からないんだよね?
魔理沙
ああ。
そんでこれらの課題は、うなぎという魚の生態がよく分かっていないために起こっていると言えるんじゃないかな。
分かっているのなら、対象の魚に対して何をどうすれば養殖出来るか等、きちんと答えが出るだろうし。
霊夢
たしかにそうだね。
よく分からない魚をなんとか養殖してみたけど、分からないところが多くて失敗しちゃって、手探りしてたら少しずつ分かってきた…みたいな印象があるなぁ。
魔理沙
大筋はそれで合ってる。
もし世の中のうなぎ漁が、成魚を獲るだけであればまだまだ謎しかない状態だったと思うぜ?
霊夢
養殖って手段を講じているからこそ、分かるところもあったってことか…
魔理沙
だな。
だが、うなぎを食べるって歴史もさることながら、養殖の歴史もそこそこあるのにまだ分からないところだらけってのは、如何にこの魚が一筋縄じゃいかないかを表しているよ。
霊夢
ほんとだよ!
そもそもまだ分からないところが多い上に、分かったことがあったと思ったらまた謎ができるとか金太郎飴か!
魔理沙
つまりまとめると、「謎が多い魚で昨今少しずつ判明しつつあるものの、判明した部分でまた新しい謎が生まれる未だ生態が解明されない魚」ってところだな。
霊夢
まさに、謎が謎を呼ぶって感じだわ。
あ、そういや今も研究は進んでるの?
魔理沙
進んでいる。
さっき完全養殖のうなぎにはメスが生まれないって言ったろ?
しかし2020年に、ある里のため池でメスになったうなぎがいて、そいつを川に放流してその生態を追うって実験を行ってるんだ。
霊夢
どういう実験なの?
魔理沙
最終目標は、実験室内でうなぎに卵を産ませてサイクルを構築するようだぜ。
成功すれば完全養殖が確実に達成できるだろうし、放流なども可能になるから絶滅危惧種のリストから外すってことができるかもしれない。
霊夢
うおおおおおお!
すごいじゃん!
なんとか成功してほしいところだね!
魔理沙
まったくだ。
人間が食べるために、シラスウナギを乱獲したことでその数が減ったってのは、どうあがいても否定できないところだろう。
今こそそのツケを、精算するときが来たんじゃないかと思うぞ。
霊夢
私たちにできることはないのかな?
魔理沙
うなぎの住む場所を汚さないことだ。
つまりは海も川も大切な!
霊夢
分かった!
今日から早速そうするよ!
魔理沙
いい心掛けだ!
…って何やってんだよ霊夢。
霊夢
き、今日食べたうなぎ…とんでもない値段なんだけど…?
魔理沙
ああ、天然モノだからな…って、お金は?
霊夢
え?
魔理沙が持ってきてるんでしょ?
魔理沙
いや?
霊夢が持ってきてるかと…
霊夢
……
魔理沙
……
霊夢
まずは土下座にぃぃぃぃぃぃ!
魔理沙
皿洗いだぁぁぁぁぁぁ!
魔理沙
ということで今回は、ウナギはどうして生態が不明なのか、について紹介しました。